日本障がい者乗馬協会の概要を紹介、障がい者乗馬の方法と効果を解説。パラリンピック情報。

乗馬方法について

乗馬療法(医学的領域)

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1960年代に、ドイツ人の医師と理学療法士のグループが定義付けました。ドイツでは姿勢の矯正や腰痛といった軽度の障害から、独力で騎乗できない重度の障害までの治療を目的として、盛んに乗馬を利用しています。
目的が治療であるため、騎乗者が馬を操ること以上に、馬が乗り手に与える影響(刺激)に主眼を置いているのが特徴です。治療の間、理学療法士が患者の反応を観察し、馬の動きをインストラクターやリーダー(馬の引き役)に指示します。よって、この方式にたずさわる理学療法士には、乗馬の知識と経験が必須条件です。理学療法士が騎乗者の後ろに乗る“相乗り介助”も、ごく一般的に行われています。
1980年代に入ってからは、乗馬療法の公認資格を持つインストラクターが行った治療(いわゆる乗馬レッスン)に健康保険が効くという制度が確立されました。1990年代以降、ヨーロッパ各国は相次いでこの保険制度を導入しています。

スポーツ乗馬(体育的領域)

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スポーツの盛んなアメリカでは、早くから障害者のための馬術競技会や各種イベントを催してきました。各種の競技は、厳密にルール化され、運営されています。騎乗者の健康増進と安全の最優先という2つの必要条件は満たしながらも、騎乗者に対しては、障害を克服して技能を向上させることを奨励します。
1996年のアトランタ・パラリンピックで、馬場馬術が正式種目となりました。これをきっかけに各国の障害者乗馬活動は一気に“競技志向”へと発展します。騎乗者がモーティベーションを持ちながら乗馬を継続するのに、きわめて有効だからです。技術を身に付け、競技に参加することによってほどよい緊張感を感じ、それまでの練習でも、向上心をもって練習に励むことができます。騎乗者が目的を持ち、それに向かって自分なりに努力することは、とても重要な意味を持ちます。

教育乗馬(心理学的領域)

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ここでは単に馬に乗ることだけでなく、馬の世話や厩舎の管理といった段階から重要な意味を持ちます。クライアントは、馬の世話を通してかけがいのない生命の尊さや、物言わぬ動物を慈しむ豊かな情緒を育みます。また厩舎の掃除や給餌をすることで、責任感や奉仕の気持ちも芽生えます。
クライアントは、それと気づかないうちに治療効果を得ることができます。障害の程度、乗馬技術の程度によって、ゲーム、トレッキング(野外散策)、スポーツ的な乗馬まで幅広く選択できます。技術の向上を目指すのが難しい騎乗者であっても、馬に乗って馬場の外へ出たり、騎乗者によってゲームの難易度を変えたりするといった工夫によって、よりよい刺激を得ることができるのです。
ここでは教育の専門家の関与が重要な意味を持ちます。近ごろはカウンセラー、心理学者(スクールサイコロジストなど)、ケースワーカーといった専門家の技術的な問いかけが加われば、いっそうの効果が見込めます。

障がい者乗馬を支えるスタッフ

上述のようにいかなる形式の障害者乗馬を行う場合でもチームを組むことが大切です。騎乗者、インストラクター、ヘルパー(ボランティア)のほかにも、必要に応じて理学療法士やカウンセラーも加わることが望ましい形です。さらに家族や学校の担任教師などの助言も有効です。

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1.インストラクター
乗馬している最中はインストラクターが全体を管理します。各スタッフがインストラクターの指示通りに行動しなければ、安全で効果的な結果を生むことはできません。インストラクターの乗馬技能は必須条件です。障害者乗馬のレッスンで使用する馬匹を管理するうえで、馬を調教する知識と技術が無ければ、安全性が保てないからです。
積極的に騎乗者本人や家族ともコミュニケーションをとり、必要であれば理学療法士や医師からアドバイスを受けることも大切な仕事です。責任感と強い意志とユーモアをもって、レッスンを指示する存在とならなければなりません。

2.リーダー
引き馬時にロープ(引き手)を持つ者をリーダーと呼びます。できるだけインストラクターと違う人がリーダーを務めるべきです。リーダーの役目は、主に馬の状態や進行方向について注意を払い、安全性を保つことにあります。
騎乗者のレベルにもよりますが、リーダーはできるだけ馬を誘導せず、騎乗者自身の力で馬をコントロールさせます。もちろん、危険でやむを得ない場合は、馬のスピードや進行方向を制御してやる配慮も必要です。

3.サイドヘルパー
障害者乗馬を行うにあたって、必要不可欠な存在がサイドヘルパーです。多くはボランティアでまかなわれ、騎乗者と最も身近に接する存在になります。サイドヘルパーは乗り手を乗・下馬させる方法を熟知している必要があります。またインストラクターや理学療法士から騎乗者の障害と能力についての説明を受け、何をするべきか、何をしてはいけないかを知っておくことも必要です。
騎乗者を自立させるためには、手伝い過ぎないことも大切です。騎乗者が馬上で姿勢を保てるようになったら、騎乗者の背中に回していた手の位置をモモに変え、やがて完全に手を離してしまえれば理想的です。騎乗者に全く手を添えず、騎乗者の横を歩くだけでも(サイドウォーカー)とても大切な役目を担っています。サイドヘルパー(ウォーカー)は、事故が起こらないよう常に騎乗者に注意を払っていなければなりません。

4.コーラー
騎乗者が視覚障害者の場合、現在地を確認させるためにコーラーを配置することを勧めます。一般的には馬場の各標記にコーラーが立ち、馬が接近してきたらポイントをコール(連呼)します。
コーラーは、騎乗者に顔を向けて明瞭に発声しなければなりません。声が小さいと全く機能しませんが、あまりに大きすぎと、馬を驚かせたり、インストラクターの指示を聞こえなくしてしまいます。
騎乗者は基本的にインストラクターの声に集中していなければなりません。コーラーの声は、馬場ラチや標記のように「そこにあるもの」として環境と一体化しているべきです。コーラーは、コール以外の言葉を発さず、一定の音量とペースで機械的にコールするのが理想的です。

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