東京2020年大会1年前イベント_1

東京2020年大会1年前イベント ー選手が語るパラ馬術ー東京2020オリンピック・パラリンピック1年前イベント 夏祭り2019より 森田佳月

 

東京都世田谷区玉川(二子玉川)に位置する二子玉川ライズのイベントスペースで、7月27日(土)と28日(日)に世田谷区が主催するオリンピック・パラリンピック一年前イベント「東京2020オリンピック・パラリンピック一年前イベント in SETAGAYA ~夏祭り2019~」が開催された。27日は30度を超える猛暑であったのにも関わらず、会場は多くの家族づれの笑顔で溢れていた。


イベントステージでMCを務める陣内智則

 

イベントの目玉は馬術!

このイベントではVRフェンシングや競技用義足体験などオリンピックやパラリンピック種目に関する体験ブースなどの東京オリンピック・パラリンピックを盛り上げるための様々な催しがあったが、乗馬体験VRを始めポニーとのふれあいコーナーや馬術経験者を招いたトークショーが3つと、「馬」に関連するものが多く見られた。それもそのはず、東京2020大会の馬術競技が世田谷区のJRA馬事公苑で開催されることが決定しているからだ。馬術の中でも競技人口そのものやパラリンピック出場者の少ないパラ馬術のことを多くの人に知ってもらうため、高嶋活士選手が馬と人間の関係をトークショーで熱く語った。

 

馬と人は一心同体

「馬と人との関係」をテーマに行われた27日のトークショーでは、高嶋とともに女優の佐藤藍子さんと障害馬術の広田龍馬選手が人馬の信頼関係を楽しそうに語った。

 

怪我をしてパラ馬術に移行する前は元ジョッキーであった高嶋は、競馬からパラ馬術への競技変更とともに、馬に対する接し方も変えたという。同じ馬とともに行う競技であっても、競馬は馬を走らせる競技なのに対し、パラ馬術は人馬一体となった演技の正確性と芸術性を競い合う採点競技である。よって、競馬ではいかに馬を気持ちよく走らせるか重視するが、パラ馬術は一定のリズムで一定のタイミングで的確な指示を行わなければならないため馬との呼吸合わせが重要となってくる。だからこそ、オリンピック・パラリンピックで唯一動物とともに行う競技である馬術では、馬とコミュニケーションをとる際も人間に接するときと同じようにし、人馬の信頼を築き上げることが必要となってくる。


トークショーで馬の魅力について語る佐藤藍子(左)、広田龍馬(中央)、高嶋活士(右)

 

「工夫に注目してほしい」

トークショー後にインタビューを行った際に、高嶋選手が何度も口に出した言葉がある。それが「工夫」だ。パラ馬術は選手一人ひとり異なる障がいを抱えていて、選手たちは自分の障がいに合わせて鞍(馬の背に置く乗馬道具)を改造したり、手綱(馬を操る綱)を一本にまとめて持てるようにしたりなどの工夫を行っているという。右半身が麻痺している高嶋選手は、腹帯(鞍を馬の背に固定するための道具)と足を置くところを輪ゴムでつないで足が揺れすぎないようにしたり、サドルホルダー(鞍の前の部分にもてるところ)をメーカーに頼んで特殊なものにしてもらったりしているという。また、右足が上がってくるのを防ぐために、パッドを挟むなどの工夫もしている。慣れるまではやはり違和感があるが、慣れると楽になるようで、パラ馬術における「工夫」は選手のパフォーマンスを左右する最大のカギとも言えるだろう。

 

障がいの程度によって、重いグレードⅠから軽いグレードVに分類されるパラ馬術。グレードⅠに分類される選手の中には、1人で歩くことすら困難な人もいる。それでも、馬に乗って、馬とともに魅力的な演技をする。グレードⅣで演技をする高嶋は、パラリンピックでは「工夫」とともにそのような人たちが演技する姿にも注目してほしいと真剣かつ熱い眼差しで語った。


愛馬に対する愛情とパラ馬術に対する熱情、その両方が今回の高嶋選手の語り口から感じ取ることができた。このイベントで馬と呼吸を合わせて行うパラ馬術に興味を持ってくれた人は多かったのではないか。「パラリンピックまであと1年ちょっとなので、胸を張って日本代表と言えるような技術を身に着けて、是非出場して活躍したい」、高嶋選手はトークショーの最後に熱い意気込みを残した。今後の高嶋選手の活躍に期待しよう。