東京2020年大会1年前イベント_2

ここから知ろう、パラ馬術
東京2020オリンピック・パラリンピック1年前イベント レポート  三原黎香

 

東京オリンピックまで363日、東京パラリンピック385日となった7月27日(土)から2日間、二子玉川ライズで世田谷区主催の「東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた1年前イベントin SETAGAYA 〜夏まつり2019〜」が開催された。


特設ステージやブースでは、2日間を通じて様々な競技を紹介する催しなどが行われた。


馬術に親しむ体験コーナーやパラ馬術の選手が登場するトークステージも催され、家族連れなどで賑わった。

馬を感じよう!

馬術は、オリンピック・パラリンピックの種目の中で唯一動物と一緒に行う競技だ。

馬術を知る第一歩は、何と言っても「馬を感じる」こと。このイベントでは、普段馬に触れ合う機会が少ない参加者も馬を身近に感じることができる体験コーナーが設けられた。

乗馬体験VR
2日間を通して長い列が途絶えなかったのが、「乗馬体験VR」だ。


鐙(あぶみ、馬に乗る時足を乗せる部分)がついた鞍型の椅子に座り、ゴーグルを付ける。ゴーグルのスクリーンには、馬上から見た景色が写っている。

スタートの合図に合わせて鞭(むち)に見立てたコントローラーを振ると、馬が加速する。勾配のあるコースを走るのに合わせて、椅子が前後左右に揺れる仕組みだ。


プレーが始まると、真剣な表情に。椅子には手綱がついている。


プレーは2人1組(観戦者が見る画面の様子)。

 

プレーを終えたばかりの小学6年生と3年生の姉弟は、「普段できない体験だった。」「椅子が動いて、リアルだった。」と興奮した様子だった。

記者も体験したところ、風を切って走る臨場感に思わずVRということを忘れて手綱を強く握ってしまった。

馬に乗る感覚の体験は、子ども達が馬術に興味をもつきっかけになったようだ。

ポニーとのふれあいコーナー
小さな子ども達に人気があったのは、ポニーとのふれあいコーナーだ。


 


しゃがんでポニーが干し草を食べる様子をじっと見ていた3歳の男の子。馬を間近に見るのは初めてなんだそう。

馬術への興味は、馬への興味から。馬の体温を肌で感じるポニーとのふれあいは、子ども達が馬術を知る入り口になったことだろう。

パラ馬術とは?

28日には、動画クリエイターさとひろとパラ馬術選手の高嶋活士(以下、高嶋)のトークステージが設けられた。

パラリンピックで行われるのは、馬術の中でも馬場馬術という種類の競技だ。決められた歩き方でコースを周って正確さと美しさを競う種目で、馬と選手がいかに一体となって演技できるかが鍵となる。

パラ馬術の選手は障がいの程度によって5つのグレードに分かれて競う。高嶋は、障がいが2番目に軽いグレード4で2020年東京パラリンピック出場を目指している。


左:さとひろ 右:高嶋

写真の高嶋が身につけている衣装は、パラ馬術で選手が着用するもの。黒い上衣に白いズボン、黒い長靴というエレガントな装いは、しなやかな美しさを競う馬場馬術ならではだ。

トークショーで、「馬に乗れる喜びが何より」と語った高嶋。馬術に対する愛と情熱が伝わってきた。

動画クリエイターという全く異なるジャンルで活躍するさとひろとの会話では、愛馬ケネディと共に動画出演に挑戦する意欲を示すなど、より多くの人にパラ馬術を知ってほしい、という高嶋の気持ちが垣間見えた。

選手に聞く、馬のきもち

馬と人とが一体となって行う馬場馬術では、馬と選手のコミュニケーションが欠かせない。

高嶋がトークショーの中で「相棒」と語った愛馬のケネディとのコミュニケーションについて聞いた。


高嶋によれば、馬は、その時の感情によって目つきが変わるとのこと。

また、耳の角度も、「何かに興味を持っている時は前、リラックスしている時は横、怒っている時は伏せる」というように変わるのだそうだ。

さらに、馬の緊張は、体がピクピクとすることで分かるのだという。
「馬は人の緊張を読み取るので、人が緊張しないようにすることで馬の緊張もほぐれる」と話していた。

練習は、「お互いがんばろうね」で始まり、「お疲れさま」で終わると話す高嶋。練習終わりには、氷砂糖でケネディ を労うのがお決まりだそう。

高嶋の言葉には、「相棒」の愛馬との間に通じ合う気持ちがにじみ出ていた。

馬術に親しみ、パラ馬術の選手と馬の絆について聞くことができた1年前イベント。パラ馬術を初めて知った人にとっても、何となく聞いたことはあったという人にとっても、パラ馬術をもっと知りたいという気持ちを刺激する機会になったことだろう。